病院などの医療機関で発生するさまざまな書類の保存をどうしていますか? 今さら聞けない書類保存の”いろは“はこの記事で解決。書類保存期間一覧のほか、よりよい保存方法にも触れていきます。
病院で発生する書類って保存が必要なの?
病院などの医療期間で発生する書類は量が多くて管理が大変ですよね。しかしそういったカルテなどの書類は医師法、医療法などさまざまな法律で保存期間が定められており、保存義務があります。もし捨てたり紛失したりしてしまうと、法律違反とみなされます。保存期間のある書類を保存していない場合、書類によっては罰則もあるため、それぞれの書類ごとの保存期間をしっかり把握して保存しておかなければなりません。なお、法律上では書類の保存期間が過ぎたら破棄してよいことになっていますが、病院などの医療関係で発生する書類については注意が必要です。例えば、もし後々医療ミスを訴えられた場合に、カルテなどが残っていないと適切な医療行為と証明できず、不利になることもあり得ます。そのため、病院などの医療機関で発生する書類は、保存期間が過ぎたあともできる限り残しておくとよいと言えます。
また、書類の保存期間の数え方についても注意が必要です。現在、医師法には起算日(数えはじめの日)を定めている文はありません。しかし、規則第九条には「保険医療機関は、療養給付の担当に関する帳簿その他の記録をその完結の日から3年間保存しなければならない。ただし,患者の診療録にあっては、その完結の日から5年間とする」と記されています。つまり「診療が終わった日」から保存期間を数えるべきでしょう。診療中の患者のカルテなどを捨ててしまうと、患者との信頼関係や医療方針に悪い影響を及ぼすだけでなく、規則違反となってしまいます。保存期間を正しく理解して、間違いのない管理ができるようにしておきましょう。
病院で発生する書類の保存期間一覧
書類を正確に管理するために、まずは法律で定められた保存期間を把握しておかなければなりません。また、保存期間を守るだけでなく、カルテなどの患者に関係する書類はできるだけ長い保存が望まれます。そのため、各病院や医療機関によって書類を保存しておきたい年数は変わってくるでしょう。どの書類を何年保存するとよいか考え、ルール化し、そのルールに沿って書類を保存管理していくことが大切です。ここではルール化のために、さまざまな医療機関で発生する書類を網羅してその保存期間を一覧にしました。法律で定められた保存期間をベースにして、それぞれの書類を保存していく年数を決めていきましょう。
保存期間5年
診療録(カルテ)
助産録
救急救命処置録
エックス線装置等の測定結果記録
放射線障害が発生するおそれのある場所の測定結果記録
(保険医による)一定の様式の診療録
死体交付証明書(埋葬許可証、火葬許可証)
(臨床研修病院の)帳簿
保存期間3年
歯科衛生士の記録
調剤済み処方せん
(薬剤師の)調剤録
(保険医療機関の)療養の給付の担当に関する帳簿、書類その他の記録
(保険薬剤師の)調剤録
(保険薬局の)療養の給付に関する処方せん、調剤録
保存期間2年
病院、診療所又は歯科技工所で行われた歯科技工に係る指示書
病院日誌
各科診療日誌
処方せん
手術記録
検査所見記録
エックス線写真
(病院の)入院患者・外来患者の数を明らかにする帳簿
(地域医療支援病院の)紹介状
(地域医療支援病院の)退院患者に係る入院期間中の診療経過の要約
(特定機能病院の)紹介状
(特定機能病院の)退院した患者に係る入院期間中の診療経過の要約
エックス線装置等の使用時間に関する帳簿
診療用放射線照射装置等の入手に関する帳簿
▼そのほか、一般の会社などでも発生する経理書類や経営にかかわる書類の保存期間を知りたい場合は、こちらの記事をチェック
病院で発生する書類のオススメの保存方法
病院などの医療機関で発生する書類は量が多く管理が大変ですよね。保存期間が過ぎたカルテなども保存しておく場合は、書類の保存スペースが足りなくなってくるのではないでしょうか。書類の保存スペースを削減できる方法として、「電子データでの書類保存」や「外部の文書保管サービスの利用」などがあります。これらの方法を導入することで、保存スペースの削減になるだけでなく書類管理の手間も減っていくはずです。「電子データでの書類保存」「外部の文書保管サービスの利用」を検討する際の参考になるように、この2つについてわかりやすく説明していきます。
電子データでの書類保存
電子データでの書類保存にはさまざまな規定があり、自己判断で電子化することは出来ません。病院などの医療機関で発生する書類の電子化については厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第5.1版(令和3年1月)」の7章、8章、9章に詳しく記載されています。このガイドラインを噛み砕いて説明すると、「データを触った人の記録を取ること」「データ破損や漏えいなどを防げるシステムを完備すること」「いつでもすぐ書面に出力し確認できるようデータを整理しておくこと」などと書かれています。書類を電子化する際は必ず目を通しておきましょう。ガイドラインに沿ったシステムを用意するには時間と予算が必要ですが、一度導入してしまえば書類の管理が楽になるはずです。
外部の文書保管サービス
文書保管サービスとはセキュリティ対策のされた施設で文書などの書類を保管するサービスです。保管スペース不足で置き場のない書類を預けておき、書類が必要になった際に取り寄せられる便利なサービスです。書類が際限なく増えていく病院などの医療機関にはうってつけと言えるでしょう。文書保管サービスを利用するのであれば、普段使わないけれど保存しておかなければいけない書類を預けるのがオススメです。文書保管専用の倉庫なら書類に適した環境下で保存されるため、長期間の品質保持にも繋がります。
なお、医療機関で発生する書類の保存の外部委託については厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第5.1版(令和3年1月)」の8章に記載があります。しっかりとしたセキュリティ対策がされている文書保管サービスでの保管は問題ないと考えられますが、オプションなどにある「書類を分類してくれるサービス」の利用は外部の人間が内容を閲覧できてしまうため注意が必要です。また、貸倉庫やレンタルルームなどの「文書保管」以外のサービスがありますが、セキュリティ対策や災害対策が十分でなく、湿度管理などの面でも書類に適した保存環境とは言えないため、こちらの利用も避けておいたほうが無難です。
日々増えていく病院などの医療機関の書類は工夫しなければ保存管理が難しいものです。電子データでの書類保存や文書保管サービスの利用などに積極的にとりかかっていきましょう。
なお、紙カルテについての詳しい保管方法はこちらの記事でも触れています。
書類の保存スペースにお困りなら書類保管サービスの書庫番人をご利用ください。