タイムカードの保管期間は何年?法律と効率管理のポイント

タイムカードは労働基準法で保管が義務付けられている重要な書類です。しかし、2020年の法改正により保管期間が延長されたことで、「結局何年保存すればいいのか」と悩む担当者の方も多いのではないでしょうか。保管義務を怠ると、労基署の調査で是正勧告を受けたり、未払い残業代請求で不利な立場に立たされたりするリスクがあります。本記事では、タイムカードの保管期間に関する法律の基礎知識から、効率的な管理方法、廃棄時の注意点まで、実務で役立つポイントをわかりやすく解説します。

タイムカードの保管義務を理解する

タイムカードは法定三帳簿の1つ

タイムカードは単なる勤怠管理ツールではなく、労働基準法上で保存義務がある「法定三帳簿」です。法定三帳簿とは、労働者名簿、賃金台帳、出勤簿のことを指し、タイムカードはその出勤簿としての役割を果たしています。これらの書類は労働時間の把握や残業代の支払い根拠となる重要な記録であり、労務管理の証拠資料として法的効力を持ちます。労働基準監督署の調査や労働紛争が発生した際には、タイムカードは「労働時間を裏付ける証拠」として提出を求められるため、確実な保管が不可欠です。

タイムカードの保管期間は何年?

労働基準法第109条では、労働関係の重要書類を3年間保存することが義務付けられています。従来はこの条文に基づき、タイムカードも3年間の保存で問題ないとされてきました。しかし、2020年の法改正により保存期間は5年間に延長されました。ただし、施行後しばらくは経過措置が設けられており、当分の間は3年間の保存で足りるとされています。とはいえ、いつ経過措置が終了するかわからないため、5年保管の体制を整えておくほうが望ましいでしょう。この二重の規定が、現場を混乱させる大きな要因となっています。

参照:労働基準法 第百九条|e-Gov法令検索

保管期間の起算日と対象範囲

タイムカードなどの労働関係書類の保管期間を正しく計算するには、「いつから数えるか(起算日)」を正確に理解することが重要です。

労働基準法で定められた書類の起算日は、以下のどちらかの遅いほうの日付になります。

  • 記録が完結した日(タイムカードの場合は最後の労働日)
  • 賃金の支払

例えば、3月分のタイムカードの締日が3月31日で、その分の給与支払日が4月25日の場合、起算日は4月25日です。これは、賃金台帳の起算日(最後の記入日)とは考え方が異なる場合があるため、混同しないよう注意が必要です。

保管の対象となるのは、正社員、契約社員、パート、アルバイトといった雇用形態を問わず全ての労働者です。もちろん、すでに退職した従業員のタイムカードも保管義務の対象となります。

また、派遣社員の場合、勤怠記録の保管義務は雇用主である派遣元(派遣会社)にあります。なお、派遣社員については、出勤簿に加えて派遣元管理台帳の作成・保管義務があり、派遣元管理台帳の起算日は「労働者派遣の終了の日」とされています(労働者派遣法施行規則第三十二条)。出勤簿は派遣元管理台帳の根拠資料となるため、同期間保管することが一般的です。そのため、派遣社員のタイムカードの保管期間は、実務上は「労働者派遣の終了の日」と「賃金の支払日」のいずれか遅い日が起算日となるケースが多くなります。このように、企業は保管期間だけでなく、正しい「起算日」と「対象範囲」を社内ルールとして明確に定め、意図しない法令違反を防ぐ必要があります。

タイムカードの保管義務を守らないリスク

労基署調査・監査リスク

タイムカードの保管を怠ると、労働基準監督署の調査や監査で大きな不利益を被ることになります。労基署は定期監督や従業員からの申告を受けて調査を行い、その際に労働時間を証明する資料としてタイムカードや出勤簿の提出を求めます。もし提示できなければ「労働時間を適切に管理していない」と判断され、是正勧告の対象です。これは会社の信頼性に直結する問題であり、調査のたびに管理不備が発覚すれば、継続的な行政指導や社名公表などのリスクも発生します。

未払い残業代請求への備え

従業員から未払い残業代の請求を受けた場合、タイムカードは最も強力な証拠資料となります。労働基準法は使用者に労働時間の把握義務を課しているため、会社側が労働時間を示す証拠を提示できなければ、従業員の主張がそのまま認められる可能性が高くなります。裁判例では「会社が労働時間を立証できなかったために、労働者の申告通りの時間が認定された」ケースが少なくありません。つまり、記録を残していないこと自体が大きな法的リスクとなり、結果として高額の残業代を支払う義務を負う危険があります。

罰則の可能性

労働基準法違反による書類不備や保存義務違反には、30万円以下の罰金という刑事罰が科される場合があります。金額自体は企業規模によっては大きくないと感じるかもしれませんが、罰則を受けたという事実が企業の信用を損なうことになりかねません。取引先や顧客に知られれば「労務管理が不十分な会社」というレッテルを貼られる可能性があります。さらに従業員に対しても「この会社は法律を守らない」という不信感を与え、離職や内部告発などの新たなリスクを招くことにもつながります。

参照:労働基準法 百二十条|e-Gov法令検索

保管の方法:紙と電子の選択肢

タイムカードの保管期間を正しく守るためには、適切な保管方法の選択が不可欠です。せっかく5年間保管すると決めても、紙が劣化して読めなくなったり、データが消失してしまっては意味がありません。ここでは、保管期間を確実に満たしながら、管理負担を軽減できる保管方法を紹介します。

紙のタイムカードを安全に保管する方法

紙のタイムカードを保管する場合、まず必要なのは整理方法の徹底です。年月ごとにファイリングし、背表紙にラベルを貼ってすぐに取り出せる状態にしておくことが基本となります。特に大規模な企業では数百人分のカードが月単位で蓄積されるため、適切なラベリングをしなければ必要な書類を探し出すのに膨大な時間を要してしまいます。保管環境にも注意が必要です。紙は湿気やカビに弱く、倉庫やキャビネットの環境によっては劣化や破損が生じます。さらに火災や水害のリスクも考慮し、耐火キャビネットを導入するか、外部の書類保管サービスを利用する方法が現実的です。紙での保管は法的要件を満たしますが、物理的スペースを圧迫し、管理にコストがかかるというデメリットが大きいです。

電子化・勤怠管理システムの活用

紙の限界を補う手段として注目されているのが、電子化と勤怠管理システムの活用です。電子化を行えば、データはクラウド上に保存され、物理的なスペースを必要としません。検索や集計も瞬時に行えるため、監査対応や労務トラブルの際に迅速に資料を提出できます。勤怠管理システムの中には、保存年限を自動的に設定できるものや保管期間満了時に通知してくれる機能を備えたものも存在します。これにより「いつまで残しておけばよいのか」という担当者の悩みを解消可能です。さらにアクセス権限の設定やログ管理を行えば、データ改ざん防止やセキュリティ面でのリスクも大幅に軽減できます。一方で、電子化にはシステム導入コストや運用ルールの整備が必要となります。特にクラウドを利用する場合は、外部委託先のセキュリティ基準やバックアップ体制を確認しておくことが欠かせません。

タイムカードの保管期間終了後の処分ルール

廃棄基準

タイムカードは保管期間が満了すれば廃棄が可能となります。法律上、3年または5年の保管義務を果たした時点で、それ以上保存し続ける必要はありません。ただし、労働紛争や労基署の調査が進行中であれば、たとえ保存期間を過ぎていても証拠資料として保持することが望ましいでしょう。過去に残業代請求や労働時間の認定をめぐって争いが発生した際、すでに廃棄していたために会社が不利な立場に立たされた例もあります。したがって、「期限を過ぎたら自動的に廃棄」という姿勢ではなく、状況に応じて柔軟に判断する体制が必要です。

廃棄前のチェックリスト

処分を実施する前には、いくつかの確認が不可欠となります。

  • 対象となる年度や月が正確に仕分けられているかを確認する
  • 誤って現行の保管対象を廃棄していないかを確認する(法令違反防止)
  • 退職者分が含まれていないかを確認する(退職者の勤怠記録も保存義務あり)
  • 廃棄対象をリスト化する
  • 二重チェックを行い、誤廃棄を防ぐ仕組みを整える

廃棄方法

処分で最も重視すべきは情報漏洩を防ぐことです。紙のタイムカードを通常のゴミとして廃棄すれば、第三者による情報流出の危険があります。復元不可能な方法としては、シュレッダーで裁断するか、専門サービスに依頼して溶解処理を行う方法が一般的です。大量の書類を扱う場合は、専門サービスに委託するほうが効率的で安全です。電子データの場合も注意が必要です。単に「削除」しただけではデータが復元される可能性が高いため、専用のデータ消去ソフトを用いて完全に削除する必要があります。また、削除作業の記録やログを残しておけば、後日監査や調査を受けた際に適切な処理を行ったことを証明できます。

よくある疑問Q&A

Q1.改正前(2020年以前)の分も5年保存が必要?

労働基準法の改正が施行される前に保存したタイムカードは、従来通り3年間の保存で法的義務を満たします。しかし、実務上は5年保存を選択する企業も多くあります。理由は、過去の労働実態を遡って請求される可能性を考慮し、安全に対応するためです。特に従業員数が多い企業や、長時間労働が常態化している企業では、余裕を持って5年保存しておくほうがリスク管理として適切でしょう。

Q2.退職者のタイムカードも保存するの?

退職した従業員のタイムカードも保存義務の対象です。退職後に未払い残業代の請求や労働時間の証明を求められるケースは少なくありません。したがって、在籍中と同様に保存期間を満たすまで保管しなければなりません。退職時にすぐ廃棄すると、将来的な労務トラブルで会社が証拠を欠く状態となり、法的に不利な立場に立たされてしまいます。

Q3.打刻がない社員(役員など)はどう扱う?

管理監督者や役員は労働基準法上の労働時間規制の対象外とされることが多くあります。ただし「管理職手当を支給しているだけで実態は一般社員と同じ勤務実態である」場合、労働者性が認められれば保存対象に含まれる可能性があります。実務では、全社員の勤怠記録を一律に保管しておくほうがリスク管理として安全です。

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この記事を書いた人

KEEPEXコラム編集部

KEEPEXコラム編集部

書類管理・機密文書廃棄などのオススメ方法を中心に皆様のお役立ちコラムを執筆しています。コラムを読んでも分からなかったことはお気軽にキーペックスにお問い合わせください。